2010年1月14日木曜日

道東気まぐれ狩猟行(番外後編)

「俺の20mぐらい後ろを歩け、何かあったら頼むぞ」

「あ、はい!」


突然の展開だ。


とここまでは、
参考にしてください。





20mぐらいうしろ・・

ということは、二人の距離を離すことで
互いに支援できる隊形を取ると言うことか。

師匠は、シカの血が所々したたる
クマの足跡を丁寧に一歩一歩トレースしている。
俺は、その後ろ20mと思うところ、
支援できる場所を自分なりに考えながらついてゆく。


緊迫した追跡の中で、
戦闘機時代のことを思い出す。
いつ敵が来ても戦闘出来るような態勢・・・
それは、
相互にある程度の幅を持つ隊形だ。

お互いに、
つかず離れずの距離を持っていれば
一撃で編隊そのものがやられることはない。

そしてもし、どちらかが交戰となっても、
もう一人は有効なサポートが出来る隊形。
それが戦闘隊形だ。

いま師匠は、クマの襲撃に対して
その戦闘機時代と
同じ隊形を俺に指示している。


笹藪と松の木が交互で並ぶ尾根を30mほど進むと、
前方に巨大な岩が出てきた。
今歩いているやせ尾根に、
ふさわしくない大きさと威厳を持った
巨大な岩が、クマの存在を予感させる。


この向こうに、クマが隠れているのか?

岩を大きく回り込むように
いったん少しだけ尾根を降りた師匠は、
岩の裏側を見渡せる場所まで進み、
そこから岩の裏まで木を盾にして登っていった。


「やべぇ・・・怖い」

俺は意味もなく、何度も後ろを振り返りながら
無音の森の中で
なんとなく木霊するクマの恐怖と勝手に戦っていた。


いままで、こんな恐怖を味わったことがない。
数多くの危険なシチュエーションを経験してきたけれども
この、何となく不気味で襲われる・・・という感覚は知らない。

銃を持っているにもかかわらず
自分は決定的に弱者になっていた。
もう「クマを獲りたい」なんて言うのはやめにしよう
と誓えそうな怖さだ。


師匠が、尾根の向こう沢に少し降りて、なにか喋っている。

「どうやら、ここまでだな」

クマは、血のりのついているであろうシカの残骸を
奥深い沢の下まで引っ張って行ってるようだった。
なぜ、ここまでなのか聞くと、

「これ以上いくと、クマがおれらの上になる可能性があるからな・・
あいつらは頭がいい、もしかしたら沢に行っていると見せかけて
どこか、上にいるかも知んねぇ」

「それにクマなんか、めったに獲れるモンでもねぇ・・
本当のクマ猟師は、はっきりとした足跡見たら
いったん引き返すモンだ、それは叩かれるかも知んねぇからだ」


その後、引き返すときに
怖かったことを師匠に話すと、

「なぁに、何事も経験だべ、そのうち少しはマシになるさ」

と少し、フォローしてくれた。

しかし、、、、
まだまだ経験が足りない。

本当に猟のこと、シカのこと、クマのことを知りたいと思ったら
そこに住まなければダメだ、、と思うようになった。

生半可な気持ちでは、狩猟なんかできない。
ましてやクマを獲るなんて。


以上、ちょっとハードな感じで書いてみましたが
(すこしお酒も飲んでます(笑))

自分の意識がかなり変わった経験でした。
さて、引っ越そうかな・・







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